【ドローンキーパーソンインタビューVol.7前編】ドローンに感じた新しい市場への可能性。DJI正規代理店 若手社長の視点 | DRONE OWNERS ドローンの楽しさを伝えるメディア

【ドローンキーパーソンインタビューVol.7前編】ドローンに感じた新しい市場への可能性。DJI正規代理店 若手社長の視点

  • 日付2017.01.19
  • 第7回は、日本で最初にDJI正規代理店となった株式会社セキドの代表取締役 大下貴之氏にお話を伺う
  • ラジコンヘリコプターの輸入販売していた時に、DJIと出会う
  • ドローンで新たな層を開拓。ピンときた理由は「簡単に飛ばせる」と「フルセット販売」

はじめに

ドローンを楽しんでいる方であれば、セキドという会社名を一度は聞いたことがあるかもしれない。筆者がドローンに触れるようになったのはこの数年だが、その当時は、DJIの正規代理店と言えばセキドしかなく、DJIのドローンを購入していない時期でもセキドという会社名は知っていた。 今回のインタビューは、そのセキドの代表取締役である大下貴之氏にお話をお伺いする。ドローンの市場が日本にまだほとんどなかったころに、なぜDJI製品を取り扱うことになったのか?また、ドローンが「空の産業革命」と言われるようになった現在、日本最初のDJI正規代理店であるセキドはどのような取り組みをしていて、今後はどのような方向に向かうのか。お聞きしたいことがたくさんある。

自動車ディーラーからドローンの販売へ

株式会社セキド 代表取締役 大下貴之氏

株式会社セキド 代表取締役 大下貴之氏

【田口】早速ですが、大下さんはセキドに入社される前は何をされていたのでしょうか。

広島のディーラーで輸入車の新車販売の営業をしていました。

【田口】ええ!?かなり意外でした(笑)。それは何年前のお話ですか?

2006年〜2008年くらいなので9年前くらいでしょうか。その頃はまだ26〜27歳でした。

【田口】輸入車販売の営業からセキドに転職されたということですか?

そうですね。セキドから「手伝ってほしい」と声をかけてもらいまして。その頃からセキドではラジコンヘリコプターを扱っており、輸入車販売の世界とは違う世界があるかな…と思い、この世界に飛び込みました。

【田口】その頃のセキドでは、どのような商品を扱っていたのですか?

主に、海外製の小型ラジコンヘリコプターやラジコン用のESCやサーボモーター、ラジコン用のバッテリーなどの輸入卸をしておりました。

【田口】そうなんですね。セキドはもともとそういったラジコン製品を輸入するビジネスをしていたのですか?

いえ、もともとは海外で建築デザインやアパレルなどを取り扱う会社がありまして、そちらが本業でした。

【田口】そうだったのですか。そこからラジコンヘリコプターの輸入販売につながっていくとは、想像できない展開ですね。

確かに今では想像できないですね。しかし、ラジコンヘリコプターを取り扱う事がきっかけになり、ラジコンの製造工場からたくさんお声がけをいただきました。今でも、HOBBYWINGやSAVOXという世界トップシェアのラジコンパーツの日本総代理店として、全国のホビーショップ様とお取引させていただいております。

DJIとの出会い〜高額なフライトコントローラーからドローンへ

【田口】ちなみに、ラジコンヘリコプターは今でもまだ販売されているのですか?

当社ではすでに取り扱っておりません。2012年には、ラジコンヘリコプターの販売からラジコンパーツの製造と販売にシフトしていました。

【田口】DJIとはいつ頃出会ったのでしょうか?

丁度、ラジコンパーツの製造と販売にシフトし始めた2010年頃に、DJIからお声がけをいただきました。

【田口】そんな昔からDJIとお付き合いがあったのですね。

そうなんです。実はDJIが創業して間もないころからお声がけをいただいておりました。当時、DJIは大型ラジコンヘリコプターに搭載するフライトコントローラーを製造しており、性能は素晴らしかったのですが当社は大型のラジコンヘリコプターを取り扱っていなかったもので、取引には、至りませんでした。ちなみにDJIの「ACE ONE」をご存じでしょうか?DJIの大型ラジコンヘリコプターに搭載するフライトコントローラーなのですが、確か、値段が100万円から150万円程度と高額でした。

フライトコントローラー「ACE ONE」

フライトコントローラー「ACE ONE」

【田口】フライトコントローラーというと、パソコンで言うとCPUのような、脳みそに当たるモジュールですよね。それだけで150万円ですか…

そうなんです。当社が取り扱っていたラジコンヘリコプターは30〜40センチの機体で送信機も付いて当時5〜6万円と手ごろでした。ですから、かなり売れたのですが、そこで150万円のフライトコントローラーをラインナップに入れても売る自信がないですよね(笑)。

【田口】ターゲットがまったく違う層になってしまいますよね。

欧米は大型のラジコンヘリコプターやエアプレーンの市場が非常に大きいのですが、日本だとその市場は圧倒的に小さいんです。お金を持っていて買ってくれそうな方はたくさんいるのですが、なにせ飛ばす場所がない。ACE ONEは製品としては優秀だと思ったのですが、日本国内では市場が見えなかったのです。

【田口】それはそうですよね。その頃は、現在のPhantomシリーズもまだない頃ですね。

そうですね。2012年の初頭には、まだPhantomの影も形もありませんでした。当時はラジコンヘリコプターのパーツなどの販売も好調でビジネスとしては全く困ることはなかったのですが、私の中では小型ラジコンヘリコプターのブームが過ぎようとしている雰囲気を感じていました。そこで注目したのが、当時、マルチコプターと呼ばれていたドローンです。

【田口】今では「ドローン」という名称が一般的になりましたが、その頃はプロペラが4つ以上ある機体を意味する「マルチコプター」の方が一般的な名称でしたよね。

そうです。しかし当初、ドローン(マルチコプター)はラジコン業界では不評でした。ラジコンヘリコプターなどと比べると簡単に飛ばせてしまうので、それまでラジコンヘリコプターをやっている方々の中には「邪道」と感じる方もいたようです。

【田口】当時はそういう意見が多かった頃ですよね。ラジコンヘリコプターの操縦の難しさを克服するのも楽しみの一つ、という方も多いと思います。やはり、素人がいきなりラジコンヘリコプターをやるのは難しいのですか?

難しいですよ。ホバリングするには機体の調整が必要と言われても、何が正しいのか、それすらわからないと思います。機体を壊しながら、ホバリングさせることができるようになるまで2カ月かかるなんて当たり前の世界です。

【田口】機体が1台、2台壊れても当たり前なんですね。

それくらいは普通です。ですから、パーツは本当にたくさん売れていました(笑)。「日本だけ、なぜこんなにパーツが売れるんだ?」と、メーカーの方が不思議がるくらいでした。アメリカでは壊したら機体自体を買い換えるのですが、それに対し日本ではパーツを購入して、修理をします。

【田口】そうなのですか。文化の違いがありますね。でも、本来的には機体を買い直したほうがいいのでしょうね。機体のどこにダメージが残っているかわかりませんから。

そうですね。個人的には機体を買い直した方がいいように思えるのですが、日本では修理をする事も趣味の醍醐味の一つでした。 そういうお客様がいらっしゃるので当社のビジネスが成立していたんだと思います。そういった環境もあって、ドローンは簡単に飛んでしまうので、修理パーツは売れるのか…?ビジネスが成立するのか…?という不安はありました。

【田口】あ、そうか!ドローンは壊れませんからね(笑)。

そうなんです。良くも悪くも壊れない。簡単にホバリングしてしまう。 ですので、ラジコンヘリコプターの楽しみがドローンには無いのだろうなと感じました。ただ幸い、自分がそれほどラジコンヘリコプターにのめり込んでいなかったので、ドローンの可能性をいち早く感じる事ができたのかもしれません。

【田口】そうか、もし大下さんがラジコンヘリコプターにのめり込んでいたら、ドローンという選択肢は無かったかもしれないですね。「こんなもの、つまんねぇよ」で終わっていたかもしれない。

その当時のメインターゲットだったお客様からはかけ離れてしまうかもしれないけど、簡単に飛ばすことができるのであれば、必ず何か形を変えて広がる可能性もあるのではないかと思っていました。ドローンに何かを取り付けて何かをしたい…と思うのが、おそらく人間の心理なので。

【田口】そうか。そういう流れでドローンにたどり着いたのですね。

Phantomとの出会い〜ドローンに見た可能性

株式会社セキド 代表取締役 大下貴之氏

【田口】ちなみに、新しい商材としてドローンに注目していた当時は、どのような製品があったのですか?

DJI製品で言うと、F450やF550という組み立て式のドローンですね。

組み立て式ドローン F450

組み立て式ドローン F450

組み立て式ドローン F550

組み立て式ドローン F550

【田口】ああ、ありましたね。赤と白のカラーリングをしたフレームのドローンですよね。

そうです。フレームとアンプとモーターとそれらのモジュールで構成されていて、脳みそに当たるフライトコントローラーは選択式になっていました。

【田口】それを組み立てて飛ばせる状態にするのですね。結構大変そうです。

ええ。当社で組み立てるにしても、お客様からのご要望に答えることは難しいのではないかと思っていました。そこをどうしようかという話をしていたタイミングでちょうど、DJIからコンタクトがあったのです。2012年11月のことでした。そこで本社に行ってみると、見せてくれたのが初代Phantomのプロトタイプでした。

【田口】そう考えると、Phantomの発売って結構最近のことなのですね。ドローン業界のスピードが早いので、もっと昔の話のように感じます。

そうですね。まだ4年程前の話です。でもその当時から、プロトタイプを持ってきた二十歳くらいの女性が会議室で簡単にホバリングさせていました。 その安定性には本当に驚きました。100万円クラスのメインコンピューターのテクノロジーの集大成がこのPhantomだとその時感じました。 DJI副社長の満面の笑顔とPhantomの完成度の高さに、DJIは世界を変えると確信しました。

【田口】その時はPhantomにカメラは付いていたのですか?それとも機体だけでしたか?

カメラがついていない旧Phantom

初代Phantom 写真は固定ジンバルにGo-Proを付けている状態

機体にカメラは付いておらず、Go-Proなどのカメラを取り付けるための固定ジンバルが付いていました。このPhantomが、僕の中ではラジコンではない、別のモノに見えました。

【田口】別のモノというのは、どういうモノに見えたのでしょうか?

既存のモノにはない、新しい可能性を感じたんです。加えて、機体と送信機、バッテリーと充電器がセットになっており、ラジコンヘリコプターで同じようなセットが売れていましたので、これは絶対売れるだろうと感じ、日本での販売を即決しました。

【田口】なるほど、日本で最初のDJI正規代理店の誕生には、そういう経緯があったのですね。大下さんが、ラジコンヘリコプターを売りながらもラジコンヘリコプターマニアでなかったということも大きなポイントでしたか?

そうかもしれません。ラジコンヘリコプターが売れるロジックと、これまでのラジコンヘリプターには無い新しい可能性の二つを感じました。
でも一番大きかったのは、DJIと我々が見ている方向が一致していると感じたことですね。

<株式会社セキド 会社概要>
2012年12月ドローンの世界最大手であるDJI社の日本で最初の正規代理店となる。
東京に産業用ドローンラボ、横浜にサロン型店舗とドローンの飛行練習場を完備。
定期的にドローン体験会や安全運用講習会を開催し、これまでの参加人数は延べ5,000名を超える。
 
オフィシャルサイト http://sekidocorp.com/
オンラインショップ本店 http://www.sekido-rc.com/

まとめ

もし大下氏がラジコンヘリコプターマニアだったら、Phantomのプロトタイプを見たときに、それを魅力的に感じられなかったかもしれない。また、オールインワンパッケージでの販売に勝機を見いだしていたところも面白い。大下氏は今でも、ドローン本体よりドローンによってできることの方に興味があるという。そういったマニアとは違う視点が、今後もセキドの成長のKeyになりそうだ。 次回は、ドローンが現在のようにブレイクするまでの経緯や、セキドの取り組みに関するお話を伺っていきたいと思う。

インタビュアー紹介
田口 厚
インタビュアー:田口厚株式会社 Dron é motion(ドローンエモーション)代表取締役
1998年〜IT教育関連NPOを⽴上げ、年間60回以上の⼩学校現場における「総合的な学習」の創造的な学習⽀援や、美術館・科学館などにてワークショップを開催。その後Web制作会社勤務を経て中⼩企業のWeb制作・コン サルティングを主事業に独⽴。
2016年5⽉株式会社Dron é motionを設⽴、IT・Web事業のノウハウを生かしながら空撮動画制作・活⽤⽀援を中⼼に、ドローンの活⽤をテーマにした講習などの企画・ドローンスクール講師、Web メディア原稿執筆などを⾏う。「Drone Movie Contests 2016」 ファイナリスト。
http://www.dron-e-motion.co.jp/

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