【ドローンキーパーソンインタビューVol.5前編】誰でも楽しめるレーシングドローン「DRONE RACER」ができるまで | DRONE OWNERS ドローンの楽しさを伝えるメディア

【ドローンキーパーソンインタビューVol.5前編】誰でも楽しめるレーシングドローン「DRONE RACER」ができるまで

  • 日付2016.12.05
  • 第5回は、R/C(ラジコン)の老舗メーカー 京商株式会社のお三方にお話を伺う
  • 本日発売のレーシングドローン「DRONE RACER」。この製品が生まれたきっかけとは?
  • コンセプトは「空飛ぶクルマ」。プロトタイプを見ながら開発経緯を振り返る

DRONE RACERが衝撃のデビュー

2016年11月25日、京商よりレーシングドローン「DRONE RACER」が発売された。さかのぼること今から約2ヶ月前の9月23日、第56回全日本模型ホビーショーでまったく新しいコンセプトのレース用ドローン「DRONE RACER」が発表された。レーシングカーのようなボディを備え、35cmの低空を滑空する姿は衝撃的だった。しかも、それがR/C(ラジコン)カーで使われているコントローラー(2chホイラープロポと呼ばれている)と同じもので、誰でも簡単に飛ばすことができた。通常のドローンは2本のスティックが上下左右に動くコントローラー(4chプロポと呼ばれている)で前後・左右・上下・回転の動きを組み合わせて操作するが、2chホイラープロポは銃の引き金のようなところでアクセルとブレーキ・バックを操作し、正面のホイールでハンドル操作をするのみだったのだ。

DRONERACERに関しては、DORONE.jpに詳しい機体レビューが掲載されている

DRONE RACER

DRONE RACER

小型本格R/Cカー「ミニッツレーサー」との共通点

京商と言えば、1970年に初めて国産のエンジンR/Cカーを発売した老舗メーカー。ホビーR/Cをやる人ならば誰でも知っているのではないだろうか。レース大会も運営しており、筆者も実は「ミニッツレーサー」という京商の小型R/Cカーの大会に出場するほどのめり込んでいた。

ミニッツレーサーは、1/27の手のひらサイズで本格的なレースが楽しめる走行性能を持ったR/Cカー。豊富なオプションパーツでカスタマイズやスピードアップが楽しめるほか、プラスチックで精巧に作られたボディはとてもスタイリッシュで、実車ファンにはたまらない。ボディのみのコレクターもいるほどだ。

また、車体をPC等に接続してモーター特性やハンドルのスピードや保持力、ジャイロセンサー(スピンしないように車体の姿勢制御をする)の強弱などを設定でき、走行タイムは車体下部に装着したICタグを読み取ることで1/100秒まで計測することができる。

こうやって説明すると、とっつきにくい高性能R/Cカーに聞こえてしまうがむしろ逆で、小型のためインドアで遊べるので主に都市部にユーザーが多く(大きな1/10サイズR/Cカーは都市部ではやる場所が少ない)、オプションパーツも数百円〜と財布にもやさしい。

前置きが長くなったが、DRONE RACERはこのミニッツレーサーと京商が培ってきたR/Cカーレースのノウハウが詰め込まれたドローンだ。手軽にレースが楽しめて本格的な走行(飛行)性能、豊富でお手頃なオプションパーツ、PCに接続してセッティング…。まさに筆者がミニッツレーサーで経験してきたことがレース用ドローンでも再現されている。

ただ、京商も自社開発のドローンはDRONE RACERが初めてとなるため、形になるまでには相当な苦労や紆余曲折があったはずだ。前編となる今回は、このDRONE RACERの開発に携わった京商株式会社の矢嶋孝之氏(マーケティング担当)、岩元崇氏(発案・開発担当)、石川博義氏(開発マネージャー)のお三方に開発経緯をお聞きしていきたい。

DRONE RACER開発のきっかけはレースイベント企画!?

左から、京商株式会社 開発マネージャーの石川氏、発案・開発担当の岩元氏、マーケティング担当の矢嶋氏

左から、京商株式会社 開発マネージャーの石川氏、発案・開発担当の岩元氏、マーケティング担当の矢嶋氏

【田口】僕はParrot Bebop Droneを持っていたのですが、2014年頃は京商でParrot製ドローンを扱っていましたよね。それが15年にはいつの間にか扱わなくなり、16年にDRONE RACERの発表となった。オリジナルのホビードローンを開発することになった経緯を教えてください。

【京商 石川氏】いくつかのきっかけが重なってできたところがあるのですが、まず最初は、私が個人的にドローンが好きで、自作機を作って空撮をしていたことがあります。もう、3年以上前でしょうか。でも、始めは楽しかったのですが、だんだん撮影することがなくなってしまったんですよね(苦笑)。

【田口】趣味で空撮を始めた方はそういうことも多いですよね。何か大きな目的があって空撮をしているわけではないので、ある程度飛ばして撮影すると飽きてしまう。

【京商 石川氏】そうなんですよね。でも、ちょうどそのころドローンのレースをやろうという方々が現れてきました。当時は450(機体の左右のモーターの軸の間の距離が450mmのドローン)のような結構大きめの機体が流行っていたのですが、そこから250が出てきて、さらにFPVの技術が発達して今あるような一般的なレース用ドローンの形になっていった。最初は私もそういったレース用ドローンが好きでしたし、もともとラジコンのフレーム設計をやってきているので、普通に250のフレームをカーボンで作った最速の機体ができるんじゃないかと思っていました。

【田口】僕も、京商はどこかのタイミングで今の250規格のフレームを出してくるんじゃないかと予想していました。が、違った。

【京商 岩元氏】そのころ、社内で「M1プロジェクト」が立ち上がりました。“未来(M)1番プロジェクト”という意味なのですが、社員が新しい市場に沿った商品を提案できるようになるための研修のようなものです。最終的には参加メンバーで社長に自分の企画をプレゼンすることになり、その中でドローンのレースをもっとエンターテインメントにできないか?と私が提案したことが、もうひとつのきっかけです。

【田口】それは面白いですね。どのようなプレゼン内容だったのでしょうか?

【京商岩元氏】フランスの森の中でドローンレースをやっている動画をインターネットで見て、京商はレースが得意分野なので京商のノウハウとドローンのレースを組み合わせたら面白いのではないか…というのが企画のスタートです。夢は大きく、企画内容もイベントとしてチケットを販売して、東京ドームにお客さんを集めてドローンレースをするというものでした。

空飛ぶクルマができるまで

【田口】当時の企画書には既にクルマを意識したデザインラフがあるようですが、はじめから低空を滑空する「空飛ぶクルマ」のような発想があったのでしょうか?

【京商 岩元氏】私は、どうしてもフォーミュラタイプのボディを乗せたいということを最初からずっと言っていました。一般的なレース用ドローンのフレームむき出しの形がどうしても納得できなくて、かっこいいクルマのようなボディを乗せたら面白いのではないかと、当初からずっと思っていたんです。

【田口】そこは最初から一貫していたんですね。

【京商 矢嶋氏】でも途中、行ったり来たりしてだいぶブレているんですよ。石川さんはその後もカーボンの本格的なフレームを作りたいって言っていたし(笑)。あとは、京商で販売しているクアトロックスアイというトイ・ドローンがあるのですが、クアトロックスでイベントをやったらいいんじゃないか?という話になったりもして。

【京商 石川氏】そうしたら社長が怒りまして。そういうことじゃないんだよ、お前ら全くわかってないな!って(苦笑)。何か特徴を持っていないと、レースをしても広まらないじゃないですか。そこで、京商だからこその「何か」ができないかな?という感じになっていったんです。

【田口】そこからホイラープロポ×低空滑空の枠組みにたどり着いたのですね。

【京商 矢嶋氏】そのころちょうど世の中でスター・ウォーズが流行っていて。エピソードいくつか忘れちゃいましたが、超低空で滑空するポッドレーサーのイメージとクルマが掛け合わさってDRONE RACERのイメージが固まってきました。

【京商 岩元氏】そのあと、実際にドローンのレースが楽しいのかわからなかったので、昼休みにクアトロックスアイでレースをやったりもしました。ドローンが上下に重なったときにどういう動きをするかとか、車のレースだったらイメージしやすいんですけど、空中のレースってどうなのかさっぱり分からないということもありましたので。空中での競り合いが成り立つか検証する為に、いろいろな実験をやりました。

【田口】それは楽しそう(笑)。実際にやってみてどうでした?

【京商 石川氏】その中でわかったのは、まず初心者の人はセンサー類をほとんど搭載していないクアトロックスアイではホバリングすらできない。レースどころではありません。そこから、自動で超低空のホバリングをする機能をつけるということが固まりました。

【京商 矢嶋氏】それともうひとつ、普段はR/Cカーを売っている営業部長が言った「ホイラープロポのドローンがあればもっと売れるのに…」という何気ない一言が、ホイラープロポで操作できるドローンを作ったきっかけです(笑)。

【田口】へぇ、そんな、ふとした会話からはじまるもんなんですね。ホイラープロポならばどうなるかな?と。

【京商 石川氏】そうですね。そこから、ホイラープロポだったらR/Cカーをやっている人もDRONE RACERをやってみたくなるかな?というアイデアも出てきました。そして、ホイラープロポと超低空滑空ならクルマと同じ操作でできるのではないかというところに行き着いたんですね。

DRONE RACERのスタートはクアトロックスアイだった!?機体開発の変遷

【田口】コンセプトは「空飛ぶクルマ」で固まったわけですが、実際の機体の開発はどのようにしていったのですか?

【京商 石川氏】これがどうやって作るかっていうのが全くなくて、難しいんです。ドローンの開発は我々も初めての経験なので。実は、いちばんの元は弊社のクアトロックスアイです。

【田口】ええええ!クアトロックスアイが元になっているんですか!?

トイ・ドローン クアトロックスアイ

トイ・ドローン クアトロックスアイ

開発用にカスタムされたクワトロックスアイ

開発用にカスタムされたクワトロックスアイ

【京商 石川氏】何個も分解して構造を調べたり、アームを一度切断してプロペラに角度を付けて接着したり。

【京商 矢嶋氏】このへんが全部最終的な製品につながっていますよね。このアームごと角度をつけられるプロペラは特許を取っていますし。

【田口】プロトタイプがたくさん出てきました!コレは開発過程がわかりやすく見えますね。まずはボディ。いちばん初めはボディがプロペラガードを兼ねるようなフルカウルタイプだったんですね。

プロペラガード兼用のボディ。重すぎて肉抜きを実施

プロペラガード兼用のボディ。重すぎて肉抜きを実施

【京商 石川氏】このボディをつけると1ミリも飛びませんでした(苦笑)。ボディは実は飛行効率がとても下がるんですね。

【田口】そうなんですね。ボディもよく見ると、原型となった初期のフルカウルボディがどんどん切り刻まれて製品版の形に近づいていっていますね。

【京商 岩元氏】そうなんです。石川さんが急にはさみを持ちだして、「これ、切ったら飛ぶんじゃない?」って感じでチョキチョキと(笑)

【京商 石川氏】プロペラの周りをボディで囲うだけで10%も浮力が落ちるんです。切り方を変えたり、厚みが薄いボディを試したり。ひたすら飛ぶボディの切断ラインを探したんです。

【田口】本当だ。よく見ると切り方が全部違いますね。しかも塗装がフェラーリ風だったり、カルソニックインパル風(国内で有名なGTレースカー)だったりするところが「レーシングカー」へのこだわりを感じます(笑)。

【京商 岩元氏】フロントウィングもあるんですよ。リアウィングはわかりやすいのですが、実はフロントウィングも。見た目がすごくいいですよね。

【田口】そこはやっぱり譲れないこだわりなんですね(苦笑)。シャシーもいろいろなタイプがあって面白い。そのうちのひとつはプロペラが下向きについていますね。

【京商 石川氏】プロペラを下向きに付けると、アームなどにプロペラの風が当たらないので効率よく揚力を稼げるんです。でも、墜落したときなどにすぐに壊れる(苦笑)。

【田口】シャシーの肉抜きのされ方がいろいろパターンがありますね。すごくこだわっているというか、苦労された跡が見えます。

プロトタイプの数々

プロトタイプの数々

【京商 石川氏】重量を軽くすることにはとても苦労しました。小型でハイパワーなモーターの選定からシャシーの設計。でも、チームのみんなは重量がかさむ提案ばかりするんですよ(笑)。

【田口】重量ってそんなに性能に影響しますか?

【京商 石川氏】すごく影響しますよ。例えば、テスト時のボディで9gあるのですが、この9gって圧倒的な重さなんです。

【田口】9gでも重たいのですか!?

【京商 石川氏】そうです。なので、ボディを外すと実はすごく軽快に飛行します(笑)。

【田口】なるほど。でも、ボディはこだわりなので岩元さんはつけろと言う。石川さんは少しでも軽くしたいのでどうにかしたい…こんなせめぎ合いだったんですね。

【京商 矢嶋氏】そうですね。それを開発チームで何度ももんで、DRONE RACERができたわけです。このあたりはなかなかお話できない点も多くて申し訳ないです。さまざまな紆余曲折を経て、この形に落ち着きました。

ボディをシンプルにした最終系に近いデザイン

ボディをシンプルにした最終系に近いデザイン

プロトタイプの残骸

プロトタイプの残骸

まとめ

ドローンをやっている立場から開発チームのお話を聞いていると、自分とはまったく逆のこだわりでDRONE RACERはできているように思えた。きっとドローンを楽しんでいるみなさんからしても、ホバリングができなければ、まずはホバリングを練習してできるようになる!という楽しみを見つけるだろう。しかし、京商はそこで高度を固定しよう…という発想に変わる。そして、ボディへのこだわり。揚力を奪うボディに、揚力とは逆のダウンフォースを生むウィングの装着。一見すると「ムダ」に見えるこれらが、逆にDRONE RACERを魅力的な商品にしていた。

次回は、DRONE RACER発売後の展開についてお聞きしていく予定だ。

 

インタビュアー紹介
田口 厚

インタビュアー:田口厚株式会社 Dron é motion(ドローンエモーション)代表取締役
1998年〜IT教育関連NPOを⽴上 げ、年間60回以上の⼩学校現場における「総合的な学習」の創造的な学習⽀援や、美術館・科学館等にてワークショップを開催。その後Web制作会社勤務を経て中⼩企業のWeb制作・コン サルティングを主事業に独⽴。
2016年5⽉株式会社Dron é motionを設⽴、IT・Web事業のノウハウを活かしながら空撮動画制作・活⽤⽀援を中⼼に、ドローンの活⽤をテーマにした講習等の企画・ドローンスクール講師、Web メディア原稿執筆等を⾏う。「Drone Movie Contests 2016」 ファイナリスト。
http://www.dron-e-motion.co.jp/

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