【ドローンキーパーソンインタビューVol.3後編】エアロセンスのオールインワンビジネスモデルとは | DRONE OWNERS ドローンの楽しさを伝えるメディア

【ドローンキーパーソンインタビューVol.3後編】エアロセンスのオールインワンビジネスモデルとは

  • 日付2016.10.17
  • 前回に引き続き、エアロセンス株式会社 CTO 佐部浩太郎氏にお話を伺う
  • ザンビアでの使用に向けて開発中のVTOL型ドローンとは?
  • 「面白い」だけじゃなく、「役に立つもの」を生み出したい

前回は、エアロセンスがドローンビジネスに参入した経緯や、「人の役に立つロボット」を目指す理由をうかがった。今回は、具体的なビジネスモデルや今後の戦略について深く聞いていきたい。

完全自律型ドローン「AS-MC02-P」を持つ佐部氏

【田口】エアロセンスが計画しているビジネスを教えてください。

基本的には、機体の開発からドローンで取得したデータをお客様に届けるところまでやります。ワークフローとして、「ドローン本体を買ってきて、一眼レフカメラを積んで、ドローンが取得したデータをPCに読み込む」というフローではビジネスをやりにくいので、機体から最後の解析サービスまで一貫して提供いたします。この戦略で最後までいけるかはわからないのですが、立ち上がり時期の今は、そういう戦略です。また、あらゆる分野を手がけるのではなくて、測量や点検に絞ってサービスを提供します。

エアロセンスのオールインワンビジネスモデル
http://www.aerosense.co.jp/workflowより引用

【田口】技術的な優位性はどこにありますか?

固定翼機のノウハウを持っているところは日本でもなかなかないので、面白いと思っています。特にVTOL型の機体は運用性もありながら、ホバリングと長距離飛行の両方ができ効率がよいので、理論的にかなった形なんじゃないかと思います。

VTOL型ドローン飛行風景

【田口】マルチコプターのほうはどうですか?

マルチコプターは、離着陸がとてもセンシティブで、環境を選ばないと安定した離着陸は難しいのですが、全自動飛行にいろいろノウハウを入れ込んであります。

【田口】離着陸の部分に独自開発技術が盛り込まれているのですね。

気付かず斜めになっていたり、センサーが正しくない状況で離陸させたときに、進行方向と違う方向を向いたりします。それをフライトしながら補正したり、事前の確認で検知したりというプログラムを組んでいます。


完全自律型ドローン「AS-MC02-P」プロモーションビデオ

【田口】ドローンのソフトウェア開発で難しいのは、どこですか?

点検の用途でいうと、物に近づいて、正確に点検する対象物を見たいわけですよね。衝突しない精度、位置決めの精度をもっと上げたいです。このあたりは研究開発が活発な分野で、基本的には画像解析技術を使うのですが、信頼性が大切です。例えば農業だと、鳥や高圧線、電線が一番気になります。電線は細くて検知するのも大変ですし、できれば自衛したいところです。

そこでエアロセンスは、障害物検出・回避を含めた動的な自動飛行経路構築のため、高性能センサーと高速画像処理エンジンを統合したシステムモジュールをドローンに搭載します。重くて高価なLiDAR*などの技術を用いず、イメージングセンサと画像処理技術のみで実現することで、GPSの入らない環境でも安価・軽量・安全に自律飛行できる技術を開発・実装していきます。
この研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成28年度「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」において、革新的ロボット要素技術分野における研究課題「UAV向け環境認識技術と飛行経路生成技術の研究開発」に応募し、今後具体的な開発内容と目標値を記載することを条件に採択されました。最終的には時速100km以上で高速飛行するVTOL機に搭載し、障害物や他の飛行体を回避し安全な航行の実現を目指します。

*LiDAR
光を用いたリモートセンシング技術の一つ

【田口】開発中の小型VTOL型ドローンはどんな機体ですか?

動きがすごくキビキビしていてマルチコプターに近い、使いやすい機体を開発中です。機体の全長は従来機の2/3、面積はほぼ半分と大型のマルチコプター型ドローンくらいです(現在のVTOL機は全幅2200mm×全長1600mm×高さ600mm)。長距離飛行用で、カメラなど比較的軽いものを搭載して飛ばすのに適しています。

「ZMPフォーラム2016」で展示されていたVTOL型ドローン
 

【田口】それは扱いやすそうですね。どのような用途を想定しているのでしょうか?

用途は、スマート農業などを想定しています。なぜかというと、農業は長距離飛ばないと、コストダウンにならないと思うんです。アメリカは固定翼でやっているのに対して、日本はマルチコプターでやる流れがありますが、それは日本の田畑が小さくて分散しているからだと思います。あっちの田んぼ、こっちの田んぼに、いちいち軽トラで移動してドローンを飛ばしていたら、あまりコストダウンにならないんじゃないかなと思います。ですので、広域に渡ってセンシング出来る機体を開発しています。

【田口】貴社は南三陸町震災復興事業において、広大な土地の測量を担当されましたよね。これは、VTOL機で測量したのですか?

違います。測量は精度がいるため、近くないといけないので、マルチコプターでやりました。測量に関していうと、センサなど様々な条件がありますが、固定翼で行う場合もあります。100ヘクタール以上のところをやっているケースなどですが、すごく粗いです。ざっくりなら固定翼でもいいんですけどね。

土の量は固定翼でもまあまあなんですけど、最終的な納品検査や形を見るときに、上からざっくりやると、側面が撮れていないことがあります。それだとチェックできないので、そこはマルチコプターがよさそうです。できればマルチでも、長時間飛べるといいのですが。

CADモデルと測量結果との合成
http://www.aerosense.co.jp/case003より引用
 

【田口】今後注力したい開発分野はどのあたりになりますか?

ドローンのデータコントロールの分野ですね。ドローンと地上との通信だったり、ドローンがセンシングした画像やデータをクラウドに直接上げたりというところです。例えば、物流でいうとドローンがA地点からB地点に移動するわけですが、B地点側は通信したいのかどうか、というところがポイントです。AB両地点で管理(通信)したいのか、片方でいいのかということを考えなくてはなりません。ずーっと繋がっていられる通信は難しいので…。おそらく、携帯電話みたいにグローバルで繋がっていて、かつ、peer to peer の細い超長距離通信の組み合わせかなぁと思っています。通信技術仕様は国もまだ検証中で決定版がないですが、正しい組み合わせを選びたいと思っています。
物流でいえば、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の2015年度第2回「開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業」において、当社の「ザンビア共和国における保健医療分野の新たな物流インフラとして、VTOL機を用いた物流サービス普及促進事業」が採択されたので、10月より本格的に開発予定です。
ザンビア国内では、地方部を中心に道路網が未整備で、特に農村地域では、医療関連物資の供給は深刻な問題です。そこで航続距離が長く、ペイロード(積載重量)が比較的大きなVTOL機は最適と考えています。

【田口】いまちょうど、携帯電話通信をドローンに搭載してフライトする検証がされている最中ですよね。通信以外の分野はいかがですか?

解析AIを使ったサービスは、お客さんとずーっと繋がっていられるのでいいですね。弊社のクライアントであるウェザーニューズさんは、カスタムしたサービスと情報提供をされていて上手だなと思います。データがだんだんたまってくるとAIによって作業が効率化されるんですよね。そうすると楽に早く結果が出せるので、お客さんが乗り換えなくなりますよね。

【田口】佐部さんは開発したくてたまらない、という技術一辺倒な方なのかと思っていましたが、サービスも重視されているのですね。

いや、私はできれば開発しないでいたいです(笑)。社員が新しいネタを持ってきたときに、「開発が大変だからなぁ」って言って断ることもありますよ。「測量ソリューションができたんだから、いっぱい売ってきてよ」とも言っています。なるべく効率よくいきたいです。一回しか使えないものを開発しても無駄なので、応用できるものがいいですね。また、「面白い」だけじゃなくて、「役に立つ」ことは重要だと考えています。

【田口】今後、エアロセンスのコンシューマー市場への参入はありますか?

今の興味は薄いですね。面白い空撮映像を撮りたい、というニーズを満たすだけでは、やがて飽きられてしまいます。参入するなら、文化として定着する、人生の中で当たり前のように使われる提案をしたいですね。例えば今は、運動会にハンディカムを持って行って子どもを撮影しますが、それくらいの提案をしたいです。

【田口】今後、ドローン市場の拡大のために、どんな取り組みが必要だと考えていますか?

持続可能なコスト構造が必要ですね。面白いからやってみた、ではなくて、手間と費用がかからない、ずっと継続できる仕組みが大事かなと思っています。そのために全自動化が必要ですね。点検や確認のために、人が移動する人件費がもっとも高コストです。オペレーションに2人~3人ついていると、すごいコストになります。できれば、ドローンで肩代わりするか、無人でやるか、でないとコストが釣り合わないと思います。

今後の展望を語る佐部氏
 

【田口】最後に、佐部さんにとってドローンの魅力は何でしょうか?

人ができないことをやれるのが面白いですね。以前やっていたAIの研究では、顔認識など、人ができることを機械もやれるようになるために、試行錯誤していました。でもそれでは、「スジが悪い」のではないか?と感じていました。人間の後追いだからです。それに対して、例えば電話は、地球の裏側にいる人と話せる、つまり人ができないことを実現したすごい技術です。同じように、ドローンも人ができないことを実現できます。これは私なりの表現ですが、「ドローンはスジが良い」と思っています(笑)。

一貫して「人の役に立つロボット」を目指す佐部氏とエアロセンス。先日は画像解析過程にディープラーニングを導入して、工事現場の資材管理を自動化・高精度化する技術も発表し、その道をどんどん突き進んでいる。中国・アメリカに対抗できる国内ドローン企業がなかなか少ない中で、ソニーが本腰を入れたエアロセンスがどこまで活躍できるか注目だ。

インタビュアー紹介
田口 厚

インタビュアー:田口厚株式会社 Dron é motion(ドローンエモーション)代表取締役
1998年〜IT教育関連NPOを⽴上 げ、年間60回以上の⼩学校現場における「総合的な学習」の創造的な学習⽀援や、美術館・科学館等にてワークショップを開催。その後Web制作会社勤務を経て中⼩企業のWeb制作・コン サルティングを主事業に独⽴。
2016年5⽉株式会社Dron é motionを設⽴、IT・Web事業のノウハウを活かしながら空撮動画制作・活⽤⽀援を中⼼に、ドローンの活⽤をテーマにした講習等の企画・ドローンスクール講師、Web メディア原稿執筆等を⾏う。「Drone Movie Contests 2016」 ファイナリスト。
http://www.dron-e-motion.co.jp/

元記事を読む

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