【ドローンキーパーソンインタビューVol.3前編】 ドローンは「人ができないことができる」 | DRONE OWNERS ドローンの楽しさを伝えるメディア

【ドローンキーパーソンインタビューVol.3前編】 ドローンは「人ができないことができる」

  • 日付2016.10.11
  • 第3回は、エアロセンス株式会社 CTO 佐部浩太郎氏にお話を伺う
  • かつてAIBOの開発に携わって感じた反省とは
  • 日本のロボット業界のこだわりを変える

エアロセンス株式会社 CTO 佐部浩太郎氏

昨年夏、ソニーの子会社ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社とカーロボティクスの株式会社ZMPの合弁企業としてスタートし、独自開発のVTOL型ドローン(垂直離着陸ができる固定翼機)やマルチコプター型ドローンを活用した測量サービスの発表で注目を浴びたエアロセンス株式会社。

ソニーがついにドローン事業に参入か!と、筆者も興奮したのを覚えている。そして、CTOを務める佐部氏は、過去にはAI搭載エンターテイメントペットロボット「AIBO」や、笑顔でカメラのシャッターを切る「スマイルシャッター」の認識技術を開発したことで知られ、その技術が独自開発のドローンにどのように活かされているのか非常に興味深いところだ。

また、取材の前日(8月末)には、ソニーモバイルコミュニケーションズが保有するエアロセンスの株式をソニー株式会社が全て取得するという驚きの発表もあった。これで本当にソニーのドローン事業参入である。

今回は、ドローン事業参入発表から1年経って改めて注目されているエアロセンスについて、ドローン事業参入の経緯から現在のサービス、今後のビジョンをCTOの佐部氏に聞いてみたい。

【田口】エアロセンス設立の経緯を教えてもらえますか?

もともとはソニー社内で飛行ロボットの研究開発を提案してチームを立ち上げたのですが、ソニー単独でドローンを作って何に使うんだ!という話になりまして(苦笑)。そんなときに、自動運転や画像解析の技術を持って産業向けにビジネス展開をしているZMPさんを紹介いただいて、外部の力を借りたほうがいいのでは、ということで始まったのがエアロセンスです。ソニーモバイルが50.005%、ZMPが49.995%を出資する形でスタートしました。

【田口】ソニー社内の研究チームの中では佐部さんが「やろうぜ!」という声掛け役になったのですか?

あるとき、いわゆる製品の開発に必要な基本技術の研究開発から、単に技術研究開発だけじゃなく、事業化を狙った体制に組み替えていくフェイズがあったんですね。逆に言うと、ほとんどの研究テーマが一旦白紙に戻されました(笑)。

僕はそのとき、今でいう機械学習(人間が自然と行う「学習」をコンピューターに行わせる人工知能研究のひとつ)の研究チームのリーダーだったのですが、そのチームも解散になりました。機械学習のチームには研究者が10人くらいいて、みなさん論文を出しているくらいのエキスパートなんですけど、逆に言うと、それしかできない人の集まりじゃないですか(苦笑)。そして周りを見ると、あっちには解散したメカチーム、こっちでは解散した電気チームがあるわけです。そこで人員を集めてチームを作り、飛行ロボットの研究開発を始めました。それから実際に事業提案ができるまで結局3年ぐらいかかりました。

2016年8月31日~9月2日に開催された「ZMPフォーラム2016」で講演する佐部氏
 

【田口】そんな経緯があったんですね。実は自分も佐部さんが開発した「AIBO」を持っていて、だいぶ長生きしましたよ。そんな技術背景もあるかと思うのですが、佐部さんが「思考するロボット」としてドローンに注目されたきっかけは何だったのでしょう?

以前ソニーは、ロボット業界の権威の方が委員長をされている産学協議会みたいなものに参加していて、2年ぐらい活動しました。そこでの主な議題は「なんで日本のロボット事業はうまくいかないのか」でした。そのころ、ちょうどアメリカでは「キバシステム」(アマゾンに入った物流システム)とか、手術ロボットの「ダビンチ」などロボットでベンチャーが成功するケースが出てきていたのですが、日本はソニーとかホンダとか大企業がロボット事業に参入しているのに、なんで利益が上がるビジネスにならないんだ!と吊し上げになっていました(苦笑)。

【田口】確かに、日本企業のロボットは実用的なヒットにつながっていないイメージがありますね。

日本のロボット業界は、人型ロボットや汎用ロボットにこだわるところがありました。しかし、ロボット業界を見たときに、マルチコプター型のロボットは増えているのがわかっていましたし、AIBOの反省として、ロボットは何か役に立たないといけないと思っています。しかも「人ができないことができる」というのが極めてわかりやすい。人は飛べません。それなので、「飛んで役に立つロボット」があればいいと思ったのです。

【田口】なるほど!AIBOは楽しいロボットでしたが、「役に立つ」というものでは無かったですね。ホンダのASIMOも同様かもしれません。「飛んで役に立つロボット」は、確かにAIBOやASIMOに無い機能です。

技術的にはできると思っていたのですけど、安全性や規制の壁はずっとありました。「あんな危ないもの」と常に言われるわけですよね。SONYとロゴが書かれたものが落ちたら大変だ、と(苦笑)。

【田口】そのブランドは重いですね。

でも、それがある意味、ソニー本体から出てエアロセンスで事業をやるきっかけになりました。ソニーという看板が無い分、チャレンジしやすいです。一方で、ソニーの子会社というのもいざというときは使えます。ズルいですね(笑)。一番おいしい出方をしたかなと思います。

「ZMPフォーラム2016」に展示されるエアロセンスのドローン
 
完全自律型ドローン「AS-MC02-P」
 
「AS-MC02-P」にはソニー製レンズスタイルカメラが搭載されている
 

【田口】そういう経緯でソニー本体ではなく、ソニーモバイルコミュニケーションズ×ZMPという組み合わせだったのですね。しかし、先日ソニー本体がソニーモバイルコミュニケーションズの保有するエアロセンス株をすべて取得しました。今後のビジネス戦略は変わっていきますか?

そうですね。これを契機に、どうやって事業拡大していくのか考え直す時期だと話しています。今まではあまりお金も人もかけずにゲリラ的に活動を広げていって、売上の見込みに応じて規模を大きくしてきました。しかし、ソニー本体がやるとなったら、最初にドーンと投資して市場に対して勝負に出る形になるかもしれません。急にそう言われても対処できないんですけど(笑)。ただZMPさんの戦略にもよるので、まだどうなるかわかりません。僕自身の所属はソニーの中長期事業開発部門なので、そういう意味では、AIロボティクスの中長期戦略を事業として進めていくというのはありますね。

インタビュアー紹介
田口 厚

インタビュアー:田口厚株式会社 Dron é motion(ドローンエモーション)代表取締役
1998年〜IT教育関連NPOを⽴上 げ、年間60回以上の⼩学校現場における「総合的な学習」の創造的な学習⽀援や、美術館・科学館等にてワークショップを開催。その後Web制作会社勤務を経て中⼩企業のWeb制作・コン サルティングを主事業に独⽴。
2016年5⽉株式会社Dron é motionを設⽴、IT・Web事業のノウハウを活かしながら空撮動画制作・活⽤⽀援を中⼼に、ドローンの活⽤をテーマにした講習等の企画・ドローンスクール講師、Web メディア原稿執筆等を⾏う。「Drone Movie Contests 2016」 ファイナリスト。
http://www.dron-e-motion.co.jp/

Vol.3後編は10月17日(月)公開予定です!お楽しみに。

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