「頼朝の窟~2017~」で全14公演のドローン夜間フライトを行ったトライポッドワークスの安全管理とは(前編) | DRONE OWNERS ドローンの楽しさを伝えるメディア

「頼朝の窟~2017~」で全14公演のドローン夜間フライトを行ったトライポッドワークスの安全管理とは(前編)

  • 日付2017.05.02
  • 2017年3月に、神奈川県湯河原町でドローンのフライトとプロジェクションマッピングを融合させたイベントが開催された
  • このイベントでドローンに関する企画やフライトを行った、トライポッドワークス株式会社のお2人にインタビュー
  • 前編では、イベント開催の経緯や、機体デザインの工夫、安全管理のポリシーについて詳しく伺う

2017年3月8日~12日の5日間にわたり、ドローンのフライトとプロジェクションマッピングを融合させたイベント「頼朝の窟~2017~」が、神奈川県湯河原町の幕山公園で開催された。源頼朝ゆかりの地である湯河原に伝わる逸話からヒントを得たプロジェクションマッピングと、UFOに見立てたドローンが満開の梅林を飛び交う、今までにない演出だ。まずはその模様を収めたショートムービーをご紹介しよう。

このイベントでドローンに関する企画やフライトを行ったのが、トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長の佐々木賢一氏と、チーフドローンオペレーターの長塚誠氏だ。テーマ設定や機体の制作、フライトなどを手掛けたお2人に、イベント開催の経緯から、安全管理のポリシー、当日の裏話まで、今回から2回にわたりお話を伺っていく。聞き手はDRONEOWNERS プロデューサーの岡田正義が担当する。

「頼朝の窟~2017~」ドローン演出を手掛けた経緯

「頼朝の窟~2017~」で使われたDJIのSpreading Wings S1000※無断複写転載禁止

「頼朝の窟~2017~」で使われたDJIのSpreading Wings S1000

岡田このイベントは私も現地で見ていましたが、とても迫力がありました。どうして、トライポッドワークスさんがドローン演出の部分を請け負うことになったのですか?

佐々木もともとは2016年の8月ごろ、明治座で行われるショーのリハーサルをドローンで撮影をしているときに、今回のイベントのプロデューサーと話したことがきっかけでした。2016年に湯河原で開催したプロジェクションマッピングをよりグレードアップさせるために、ドローンを使いたいという話でした。その後、11月に再度、正式なオファーをいただいてプロジェクトがスタートしました。

代表取締役社長の佐々木賢一氏(写真右)とチーフドローンオペレーターの長塚誠氏(写真左)

トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長の佐々木賢一氏(写真右)と
チーフドローンオペレーターの長塚誠氏(写真左)

岡田どんなオファーだったのでしょうか。

佐々木梅祭りの演出としてドローンを飛ばす、というざっくりしたオファーでしたね。ですから、どんな演出をして飛ばそうか?という企画段階から当社も携わりました。このイベントの企画演出を統括する株式会社インテグラル・ヴィジョン・グラフィックス代表取締役の馬場隆之さんと話す中で、当時YouTubeで話題になっていた、1,000WのLEDを積んで飛ぶドローンの動画が面白いよね、という話になりました。
そこから、大型ドローンをUFOに見立てた「未知との遭遇」を演出テーマにしよう、とすぐに決まりました。ただ、軽量かつある程度の強度があり、共振して振動を起こさない設計という条件を満たす機体デザインがなかなか決まらなくて…

岡田悩みながら、どうやってデザインを着想されたのでしょうか。

佐々木先ほどお話しした馬場さんとの最初の出会いは、『SAKURA』という明治座で行われていた公演の撮影でした。機体デザインに悩んでいたころ、たまたま久々に『SAKURA』の公演を見に行ったら、LEDで光るフラフープが小道具に使われていたんですよ。それを見た時、「これだ!」と思いましたね。それで、すぐに長塚と二人で試作したんです。

岡田そこから機体デザインが決まっていったのですね。

佐々木安全面を考慮して、バランスが取りやすくて軽い機体デザインを目指していたので、プラスチック製で円形のフラフープはぴったりでした。それから、UFOのイメージを作るために、明るさが2,000ルーメンを超える海外製のサーチライトも載せました。映画などで、UFOから出る強いサーチライトの光が人間を照らす場面がありますよね?宇宙人が人間を誘拐する…というような場面でよく見る光線です。あれを再現したかったんです。

岡田ドローンに取り付けられたLEDが色とりどりに光るのも、UFOをほうふつとさせました。

長塚電飾の発光パターンをインストールしたマイコンをドローンに搭載しました。今回のプロジェクトに参加している電飾のスペシャリストに作ってもらったものです。ドローンは、演出として映える大型機種を使いたくて、DJIのSpreading Wings S1000(以下、S1000)にしました。今回はフラフープ、フラッシュライト、マイコンと機体に積むものが多かったですが、そういう意味でもS1000はちょうどよかったです。

岡田イベントでは、S1000のほかにPhantom4 Proも飛ばしていましたね。

佐々木S1000が1機だけでは寂しいので、2機飛ばそう、と話していました。それに加えて、LEDで装飾したPhantom4 Proを2機使って脇を固めることにしました。合計4機飛ばすことで、「未知との遭遇」というテーマをリアルに表現できたかなと思います。
そこで問題になったのが、S1000クラスの大型機を夜間、しかも強風が予想される春先の山の麓で安全に飛ばせるドローンのスペシャリストの確保でした。そこでパッと頭に浮かんだのがDアカデミー株式会社の依田健一さんの顔で、企画が決まった日にすぐに電話して、無理やりスケジュールを空けてもらいました。それから、Phantom4 Proのフライトは株式会社ビューロジェネロの若林航さんにお願いしました。

左から、トライポッドワークス株式会社 長塚氏 Dアカデミー株式会社 依田氏 トライポッドワークス株式会社 佐々木氏 株式会社ビューロジェネロ 若林氏

左から、トライポッドワークス株式会社 長塚氏
Dアカデミー株式会社 依田氏
トライポッドワークス株式会社 佐々木氏
株式会社ビューロジェネロ 若林氏

夜間フライトをする上での安全管理の課題とは

岡田多くの観客がいるイベントでの夜間フライトは、安全管理上の課題が大きかったのではないでしょうか?

佐々木安全第一というのが、一貫したポリシーでした。何か起これば、楽しいイベントが台無しになってしまいます。事前に国土交通省と相談し、機体の改造に関しても承認を得ました。また、事前に何度もテストをして、現地でもリハーサルしました。

代表取締役社長の佐々木賢一氏

岡田現地は風も強かったですよね。

長塚強風は常にネックでした。離着陸する場所に道路があって、そこが風の通り道だったので、風速5~6mあったと思います。特に離着陸時は神経を使いましたね。雨天はプロジェクションマッピングが中止になるのでフライトも取りやめになるのですが、強風だとプロジェクションマッピングは決行されます。1日3回公演、5日間で合計14回(※)の公演を行いましたが、いつも公演の直前まで、風速計を見て飛ばせるかどうか判断していました。

※ 電源車のトラブルにより、3月12日(日)は2回公演に変更された

佐々木観客エリアには絶対に近付かない、何かあったら梅林のほうへ向かう、というルールも徹底しました。あとは、2.4GHzの電波は照明の遠隔操作と電波干渉があって、電波遮断にも気を使いましたね。常にインカムで連絡を取り合ってチームワークで運行管理することで、5日間無事に開催することができました。5日間合計の入場者数は約1,400人に上り、たくさんの方に見ていただけたようです
飛ばしている時間は1回5分程度なのですが、通常の空撮とは全く違う緊張感があり、一日終わるとぐったり疲れましたね。

異業種からドローンオペレーターへ転身

岡田長塚さんは今までに、こういうエンターテインメントとしてのフライトを手掛けたことはあったんですか?

長塚今回が初めてでした。これまでは空撮をメインに手掛けていたので、エンターテインメントというジャンルには非常に興味があって、どんなものができるか楽しみでしたね。

チーフドローンオペレーターの長塚誠氏

岡田長塚さんがドローンオペレーターとしてトライポッドに入社されたのは、わりと最近ですよね。

長塚以前は全く違う仕事をしていて、トライポッドに入社したのは2016年の12月です。ドローンとの出会いは2014年で、Phantom2 Vision+を買いました。箱を開けて20分後に墜落させてしまったのは、苦い思い出です。それからは、絶対に落とさないようにしよう、と思って練習しました。そのおかげか、昨年開催された、「ドローン動画コンテスト #PORTO3316」では優秀賞をいただきました。

岡田DRONE OWNERSでは、ドローンオペレーターやパイロットになりたい人を応援しています。長塚さんにとって、ドローンオペレーターへの転身は思い切った決断だったかと思いますが、趣味の空撮を仕事にしようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?

長塚ドローンに夢中になったからですね。ここまで熱中できるものに出会ったのは初めてでした。ドローンを使えばこんな景色が見られるんだ、と感動したんです。この感動を多くの人に伝えたい、趣味ではもったいない、という思いからプロになりました。

岡田佐々木さんは、どうして長塚さんを採用しようと思ったのですか?

佐々木長塚のYouTubeチャンネルはドローン使いには人気があったので、知り合う前からよく見ていました。チャレンジしている面白いヤツがいるな、と思っていましたね。あとは、撮り方や編集、色使いが私に似ていることも気になっていました。トライポッドの名前で空撮をする以上、ある程度、私と共通した作風の人物を探していたんです。

岡田佐々木さんといえば、最近だと「Drone Movie Contest 2017」でファイナリストになった作品が印象的ですが、確かに共通点を感じます。作風が似ているという点が、採用の決め手になったのですか?

佐々木決め手は、ドローンにかける情熱を感じたことです。撮影と編集、その両方のセンスを併せ持った人材が欲しかったんです。そうなると、スキルも複合的なものが必要とされますよね。ドローンが相当好きでないと、できません。そういう情熱は、この先自社業務でさまざまなチャレンジがあったときのパワーになります。当社の「ドローンを使って空間を最大活用する」というビジョンを、情熱を持った人物と一緒にやりたかったんです。そういう意味では、今回のイベントも長塚がいなければ実現できなかったと思います。

代表取締役社長の佐々木賢一氏(写真右)とチーフドローンオペレーターの長塚誠氏(写真左)

まとめ

今回はイベント開催の経緯や、安全管理の工夫について伺った。次回5月10日の後編では、夜間のフライト・空撮テクニックなどについて詳しく伺っていく。

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